転がる人々2

by Saito 2015年02月16日

「大丈夫ですか?」

心優しい2人組の女の人が現れて一緒にAじいさんを立ち上がらせようとしてみるのですが、立ち上がる気がないのかなんなのか全然上手くいかず「ヤメてくれー」の声と周りのざわつきを聞き流しながらあれこれやっていたんです。そうこうしている所へ

「Aじいさん!!」

と馬鹿でかい声で近づいてくるこれまた大柄なおじいさんと、その後ろをヨロヨロついてくるこれまたおじいさんが現れました。このおじいさん達4人組のグループだったみたいで、確かに最初Aじいさんの所に私が声を掛けに近づいた時に近くで立ち話をしているおじいさんがいるなというのは思ったのですが、同じグループだとは全然その時まで気が付きませんでした。気が付かないくらいこっちはAじいさんが大変な時にその声のでかい大柄なおじいさん(Cじいさん)とヨロヨロのおじいさん(Dじいさん)我関せずな感じで話し込んでたんです。後から思えば女の人が加わった事でCじいさんが近づいてきたんだと思うのですが、最初私に気が付くなり

Cじい:「なんだ君は!!」

うん‥ナンダキミハ?一瞬何を言われてるのか分からずCじいさんを見つめ返すと明らかに不審気な目…。

私:「ああ、いや、ただの通りすがりですけど大変そうだったので」
Cじい:「そういう優しさは生きていく上で大切だな!!」
私:「…そうですね」

当然このじいさんも酔っぱらってるよねともうこのあたりで急速に心が萎え始めていたのですが、それでも懸命に女の人と協力してAじいさんを助け起こそうとしていると、

Dじい:「わしオシッコしたいから行ってくる」

つっ!?あっけにとられてるとDじいさんはヨロヨロどこかに去って行き、それを見てまたでかい声で

Cじい:「ほらDじいさんも頑張って歩いてるんだから、Aじいさんも頑張らなきゃ!!」
Aじい:「ヤメてくれー」
Cじい:「おっ!?今女の人の胸があたってるぞ!!」
Aじい:「ヤメてくれー」
Cじい:「Aじいさん、立ち上がったらこの人が胸揉ませてくれるって!!」
Aじい:「ヤメ・・」
Cじい;「いや、わしが先に揉ませてもらおうかな!!」

…なんですかこれ。ねえ、これなんですか?そこで少し酔いが冷めてきたのか今まで沈黙していたBじいさんの「大丈夫ですから」という言葉を皮切りに、少し苦笑いをした後に抱えていた手をスッと離し「まあ、男の人も居る事だし」と言って2人組の女の人は静かに去って行きました。Cじいさんが「どこ行くのー!!」かなんか言ってた様な気がしますが、私もニコッと笑って抱えていたAじいさんの眼鏡と帽子と傘をCじいさんに手渡し、その日の仕事先へと向かいました。まだ何か言っていた様な気がしますが、楽しい午後をありがとうと思いつつ振り向かずに行きました。その後の事は今となっては知る由もありませんが、転がる人々は割と元気な様です。